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自社ビルを持つメリットとは?本社ビルを信用・資本効率・柔軟性から考える

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本社ビルを持つことは本当に経営に有利なのか
― 信用・資本拘束・柔軟性から考える

IL06-1自社ビルを持つメリットとは?本社ビルを信用・資本効率・柔軟性から考える

2026/08/24

結論

この記事の要点

「いつかは自社ビルを持ちたい」——経営者であれば一度は抱く感覚です。自社ビルは、会社の成長や信用を象徴する存在になり得ます。

しかし本社ビルは、単なる「資産」ではありません。多額の資本を長期間固定し、将来の組織規模や働き方にまで影響する経営インフラです。

したがって本社を考えるときに問うべきは、「自社ビルを持つべきか」ではなく、「これからの会社に、本社はどのような役割を果たすべきか」です。

はじめに

「いつかは自社ビル」は経営の正解なのか

創業当初は小さな賃貸オフィスから始まり、事業の成長とともに社員が増え、売上が拡大していく。そしてある段階で、「そろそろ自社ビルを持ってもよいのではないか」という話が持ち上がります。

自社ビルの保有は、会社が一定の規模まで成長した象徴でもあります。取引先からの見え方が変わり、社員にとっては「自分たちの会社の本社」という誇りにつながることもあります。さらに、「賃料を払い続けても資産は残らない。それなら自分たちで所有した方がよい」という考え方も根強くあります。

いずれの見方にも、一定の合理性があります。しかしCRE戦略の観点からは、「自社ビル=経営に有利」と最初から結論づけることはできません。本社ビルの所有には、信用や象徴性というメリットと同時に、多額の資本を不動産へ固定するという側面があるからです。

本社は、本当に所有した方がよいのでしょうか。


目次

    自社ビルが信用・ブランドになる理由

    自社ビルの価値は、単純な経済合理性だけでは説明できません。企業にとって本社は「会社の顔」でもあります。顧客や取引先を迎え、社員が働き、会社の文化や歴史を体現する場所。場合によっては、地域社会における企業の存在そのものを象徴する場所でもあります。

    経営者が「自分たちの本社を持ちたい」と考えること自体は、自然な感覚です。重要なのは、その感覚を否定することではありません。IL06の基本思想は、自社保有が持つ「象徴性」を否定せず、企業の成長段階・資本制約・将来シナリオから最適解を導き出すことにあります。

    問題になるのは、「自社ビルを持つこと」そのものが目的化したときです。

    自社ビルが信用・ブランドになる理由

    本社ビルの所有には、数字だけでは表しにくい価値があります。自社の考え方に合わせてオフィス空間を設計できること。受付、会議室、執務空間を、自社のブランドや働き方に合わせてつくれること。長期間同じ場所を拠点とすることで、取引先や社員に対して安定した企業イメージを形成できることもあります。

    それは、「この会社はここを拠点として事業を続けていく」というメッセージにもなります。したがって、「自社ビルは時代遅れだから持たない方がよい」という考え方も単純にすぎます。自社ビルには、自社ビルだからこそ得られる価値があるのです。

    ただし、ここでもう一つの側面を見る必要があります。

    本社ビルは多額の資本を長期間固定する

    本社ビルの取得には、通常、多額の資本が必要です。土地、建物、内装、設備。さらに取得後も、維持管理や設備更新の負担が続きます。

    つまり本社ビルを持つことは、不動産を取得することであると同時に、会社の資本配分を決めることでもあります。仮に本社ビルへ数億円を投じるなら、その資金は同時に、新規設備・研究開発・DX・人材採用・新規事業・M&Aといった他の用途には使えません。

    会社によって、資本を投じるべき対象は異なります。したがって経営者が考えるべきは、「自社ビルを購入できるか」ではなく、「会社の限られた資本を、本社ビルへ振り向けることが最も合理的なのか」です。

    ここまで考えて初めて、本社ビルは不動産の問題から経営の問題になります。

    会社が成長すれば、本社に必要な条件も変わる

    本社戦略には、もう一つ難しい論点があります。会社は変化するということです。現在50人の会社が、5年後も50人とは限りません。成長すれば100人、200人になるかもしれず、反対に事業再編によって必要なオフィス面積が縮小することもあります。

    働き方そのものが変わる可能性もあります。すべての社員が本社に集まる必要があるのか。営業拠点を分けるのか。新規事業部門だけ別拠点にするのか。M&Aで組織が急拡大するのか、あるいは事業再編を行うのか。

    こうした変化を踏まえると、現在の会社にとって最適な本社が、10年後にも最適とは限りません。本社を所有すれば安定性を得られる一方、変化に対する柔軟性は低くなる場合があります。本社戦略では、「現在の会社に合っているか」だけでなく、「将来の会社の変化に対応できるか」まで見通す必要があります。

    「所有=得、賃借=損」とは限らない

    自社ビルの議論では、「賃料を払い続けても、最後には何も残らない」という声と、「自社ビルなら資産が残る」という声が対立しがちです。確かに、その側面はあります。しかし、この二点だけを比較しても答えは出ません。

    所有すれば資産は残りますが、そのために多額の資金を投じます。また、会社の状況が変わったときに、本社を簡単に移すことはできません。一方、賃借は資産を所有しない反面、会社の規模や事業環境に応じて本社を変更しやすく、本社取得に使わなかった資金を本業へ振り向けることもできます。

    つまり、所有と賃借では、会社が得る価値の種類が異なります。だからこそ「所有は得」「賃借は損」という単純な比較ではなく、会社として何を優先するのかを考える必要があります。

    本社を「建物」ではなく「経営インフラ」として考える

    ここまでの議論から見えてくるのは、本社を単純な不動産として考えることの限界です。本社は、資本を投じる対象であり、社員が働く場所であり、顧客を迎える場所であり、企業ブランドを表現する場所であり、災害時にも事業を継続するための拠点でもあります。

    添付企画書では、本社について「不動産価値・利用価値・財務価値・組織価値を分けて統合する」ことがIRESの独自性として整理されています。

    つまり、本社は「物件」ではなく「経営インフラ」です。この視点に立てば、「買った方が得か」「賃料はいくらか」だけでは不十分であることが分かります。

    本社は「保有か賃借か」の二択でもない

    では、本社にはどのような選択肢があるのでしょうか。大きく分けると、自社保有と賃借があります。しかし今回のIL06では、もう一つの選択肢——ハイブリッドを加えます。

    例えば、本社の中核機能だけを自社で保有し、事業規模の変化が大きい部門は賃貸オフィスを利用する。あるいは主要拠点を保有しつつ、営業拠点やプロジェクト拠点を賃借する。こうすれば、「安定性を取るか、柔軟性を取るか」という二択ではなくなり、会社の機能ごとに本社やオフィスの持ち方を変えることができます。

    では、自社保有・賃借・ハイブリッドを何で比較するのか

    ここまでで、選択肢は見えてきました。しかし、どの方式が自社に最適なのかという問題は残ります。「自社ビルなら信用が高いから保有する」「賃料が高いから購入する」「成長企業だから賃借する」——これだけでは、やはり不十分です。

    本社という特殊な企業不動産を比較するには、本社固有の判断基準が必要です。添付骨子では、そのための軸として、事業安定性・資本効率・柔軟性・総コスト・ブランド・BCP・出口という7つを設定しています。

    前編では、ここから先には踏み込みません。後編では、自社保有・賃借・ハイブリッドを、この7つの判断軸で実際に比較していきます。

    前編まとめ

    本社を「成功の象徴」だけで決めない

    自社ビルには、信用やブランド、安定性という価値があります。その価値を否定する必要はありません。一方で、本社ビルの所有は、多額の資本を長期間固定する意思決定でもあります。そして会社は、成長・事業転換・組織再編・働き方の変化を通じて変わり続けます。本社もまた、こうした変化に対応しなければなりません。

    したがって本社戦略の出発点は、「自社ビルを持つべきか」ではなく、「これからの会社にとって、本社は何のために必要なのか」です。

    後編では、自社保有・賃借・ハイブリッドを7つの判断軸で比較し、自社へ当てはめる方法を具体的に考えます。


    YouTubeでも全体像を解説します

    IRES Legacy実践編 第6回のYouTube長尺では、「本社ビルは購入と賃借、どちらがよい?」という経営者が抱きやすい疑問から入り、保有・賃借・ハイブリッドを図解しながら比較します。文章よりもまず全体像を把握したい方は、動画もあわせてご覧ください。

    (2026年9月1日公開予定)


    御社の本社は、今後の経営に合っていますか

    本社は毎日利用しているため、遊休不動産ほど「見直すべき資産」とは認識されません。しかし、「現在使えている」ことと、「将来の経営戦略に適している」ことは別です。

    Athena Partnersでは、IRESの考え方に基づき、本社を経営インフラとして捉え、取得・保有継続・移転・賃借といった選択肢を経営戦略から整理する支援を行っています。本社について大きな意思決定をする前に、複数の選択肢を比較したい場合には、ご相談ください。

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