アテナ・パートナーズ株式会社

企業不動産は「持つか売るか」だけではない|CRE戦略で考える4つの意思決定

お問い合わせはこちら

企業不動産は「持つか売るか」だけではない|
CRE戦略で考える4つの意思決定

企業不動産は「持つか売るか」だけではない|CRE戦略で考える4つの意思決定

2026/07/23

企業経営において、不動産は人件費に次ぐ大きな経営資源です。しかし多くの企業では、この重要な資産が十分な経営判断の対象になっていません。

私たちは経営者の方から、次のようなご相談をよくいただきます。

  • 「この土地は売った方がいいでしょうか。」
  • 「本社ビルは持ち続けるべきでしょうか。」
  • 「遊休地を活用した方がいいのでしょうか。」

どれも自然な疑問です。
しかし私は、いつも最初にこうお伝えしています。

「その質問の前に、考えるべきことがあります。」

 

企業不動産は、「持つか」「売るか」という二者択一で考えるものではありません。本当に重要なのは、企業価値を最大化するために、どのような意思決定が最適なのかという視点を持つことです。

この記事では、CRE(企業不動産)戦略の観点から、その考え方の土台を整理します。

この記事では次の3点について解説します。

・なぜ「持つか売るか」という発想だけでは不十分なのか

・企業不動産の4つの意思決定

・企業価値を高める判断基準


目次

    「持つか売るか」という発想が生まれる理由

    日本企業では、不動産について議論すると、すぐに「保有か売却か」という話になりがちです。その背景には、日本独特の歴史があります。

    高度経済成長期からバブル経済にかけて、多くの企業は「土地は値上がりするもの」という前提で不動産を取得してきました。土地を所有することが企業の信用力や財務基盤の象徴でもあり、「土地は持っていて損はない」という価値観が広く共有されていたのです。

    しかしバブル崩壊後、地価は一律に上昇する時代ではなくなり、不動産は「保有しているだけで価値が増える資産」ではなくなりました。それにもかかわらず、経営者の意識には「持っている方が安心」「売るのは最後の手段」という考え方が残っているケースが少なくありません。

    逆に近年では、「ROA(総資産利益率)を改善するためには売却すべきだ」という極端な議論も見られます。しかし、この二つの考え方は、どちらも本質を見失っています。

    重要なのは、保有そのものでも売却そのものでもなく、経営戦略の中で、その不動産がどのような役割を果たしているのかを考えることです。

    不動産の意思決定は4つしかない

    では、経営者は何を基準に判断すればよいのでしょうか。

    企業不動産の意思決定は、基本的に次の4つしかないと私たちは考えています。

    • 保有する
    • 活用する
    • 売却する
    • 組み換える

    一見当たり前に思えるかもしれませんが、この4つの選択肢を整理して比較している企業は、意外と多くありません。

    この考え方を図で整理すると、企業不動産の意思決定は次のようになります。

    選択肢
    概要
    合理的な場面
    保有する
    現状のまま維持し、
    将来の選択肢を残す
    安定収益や信用力の維持を
    優先したい場合
    活用する
    賃貸・建て貸し等で
    収益性を高める
    資産を手放さずに収益基盤を
    強化したい場合
    売却する
    資金化し、
    本業や新規投資に振り向ける
    資本効率の改善や成長投資の原資が
    必要な場合
    組み換える
    より事業に適した資産へ
    入れ替える
    事業戦略の変化に不動産を
    適合させたい場合

    例えば本社ビルであれば、そのまま保有を続けるのか、一部を賃貸して収益性を高めるのか、売却して本業への投資資金に充てるのか、あるいはより事業に適した場所へ移転し新たな物件へ組み換えるのか——どの選択肢にも合理性があります。

    重要なのは「どれが正解か」ではなく、「自社にとってどれが最適か」を判断することです。

    「何もしない」ことも経営判断である

    企業では「今は様子を見よう」という判断が行われることがあります。これは一見、何も決めていないように見えます。しかし実際には、「保有を継続する」という意思決定をしていることになります。

    ⚠ 「何もしない」ことのコスト
    遊休地を10年間そのまま保有した場合、その間も固定資産税は発生し、草木の管理やフェンスの補修など維持管理費も必要です。さらに、その土地に眠っている資金は、新たな設備投資や事業投資に使うことができません。つまり「何もしない」という判断にも、見えにくいコストが確実に発生しています。

    経営者は、この見えにくいコストまで含めて判断しなければなりません。経営では、現状維持も一つの意思決定です。

    判断基準は会社ごとに異なる

    ここで重要なのは、4つの選択肢に絶対的な正解は存在しないということです。

    例えば急成長している製造業であれば、遊休地を売却して最新設備へ投資した方が企業価値は高まるかもしれません。一方、安定した賃貸収入が本業を支えている会社では、収益不動産を保有し続けることが経営の安定につながる場合もあります。

    本社ビルについても同様です。「賃貸の方が資本効率は良い」という意見もありますが、所有することで金融機関からの信用力が高まり、長期的な資金調達やブランド形成に寄与するケースもあります。

    つまり企業不動産は、単純な損得だけでは判断できません。次のような多面的な視点から評価する必要があります。

    評価軸
    着眼点
    収益性
    その不動産が生み出す収益・賃料水準
    キャッシュフロー
    保有・活用・売却それぞれの資金繰りへの影響
    資本効率
    投下資本に対するリターン(ROA等)
    財務体質
    自己資本比率・負債バランスへの影響
    借入余力
    担保余力や今後の資金調達への影響
    税務
    譲渡益課税・固定資産税等の税務コスト
    事業承継
    後継者への引継ぎやすさ
    採用力・ブランド価値
    拠点の立地や外観が採用・対外信用に与える影響

    ※これらの評価軸を総合的に比較して初めて、保有・活用・売却・組換えの最適解が見えてきます。

    相談事例に見る「4つの選択肢」

    実際の相談でも、「売却しかない」と思われていた案件が、別の選択肢によって解決することがあります。

     

    事例①:遊休地の活用で資産を手放さずに解決

    遊休地を所有する企業から「売却したい」というご相談を受けたケースでは、詳しくヒアリングすると、本当に必要だったのは資金調達ではなく、将来の安定収益でした。
    そこで建て貸しという活用方法を提案した結果、土地を手放すことなく、長期の賃料収入を確保できました。もし売却してしまっていたら、その後の安定収益という選択肢は失われてしまうことになったでしょう。

     

    事例②:先祖代々の資産を売却し、本業へ再投資

    長年保有してきた賃貸ビルについては、「先祖代々の資産だから残したい」という思いが強かったものの、建物の老朽化や修繕負担、空室リスクを総合的に分析した結果、売却して本業へ投資した方が企業全体の収益性が高まると判断した事例もあります。

     

    このように、同じ「不動産」でも、企業の状況や経営目標によって最適な答えは異なります。

    CRE戦略とは経営戦略そのものである

    CRE(Corporate Real Estate)戦略とは、単なる不動産活用ではありません。企業不動産を、経営資源として最適化するための考え方です。

    つまり「どの土地を持つか」ではなく、「企業価値を高めるために、この不動産をどう位置付けるか」を考えることです。

    だからこそ、経営・財務・建築・不動産・税務・法務・金融といった多様な視点を統合して判断する必要があります。不動産会社だけでも、建築会社だけでも、税理士だけでも答えは出ません。経営全体を俯瞰した意思決定が求められるのです。つまり、CRE戦略とは『不動産戦略』ではなく、『企業価値を最大化するための経営戦略』なのです。

    IRES Legacyが目指す企業不動産戦略

    Athena Partnersでは、この考え方をさらに発展させた独自のフレームワークとして、IRES(Integrated Real Estate Strategy)を提唱しています。

    IRESでは、不動産を単独で評価するのではなく、経営戦略・財務戦略・事業戦略・建築=施設計画・金融・税務・法務・プロジェクトマネジメントを統合し、企業価値の最大化という視点から意思決定を支援します。

    その出発点となるのが、保有・活用・売却・組換えという4つの選択肢を正しく比較することです。


    まとめ

    企業不動産は、「持つか」「売るか」という単純な二択で判断できるものではありません。保有することにも理由があり、活用することにも価値があります。売却や組換えが企業価値を高めるケースもあります。

    重要なのは「どの選択肢が正しいか」を探すことではなく、

    自社の経営戦略に照らして、どの選択肢が最も合理的なのかを判断することである。

    そのためには、不動産を経営から切り離して考えるのではなく、経営そのものの一部として捉える視点が欠かせません。

    次回は、この考え方をさらに一歩進め、「企業不動産をどう分類すべきか ― IRES4分類モデル」について解説します。企業不動産はすべて同じではありません。本社、工場、賃貸ビル、遊休地では、それぞれ果たす役割も評価基準も異なります。この分類を理解することで、保有・活用・売却・組換えという4つの意思決定を、より合理的に行えるようになります。ぜひ次回もご覧ください。


    自社の不動産、「持つか売るか」で悩んでいませんか?

    まずは、自社の不動産が現在どの4つの選択肢にあるのかを整理してみてください。そこから、企業不動産の経営判断は始まります。

    Athena Partnersでは、IRES(Integrated Real Estate Strategy)に基づき、保有・活用・売却・組換えの4つの選択肢を、経営・財務・建築・税務・法務の視点から統合的に診断するご相談を承っています。まずは自社の不動産が抱える課題を整理することから、お気軽にお問い合わせください。

    ご相談・お問い合わせ

    アテナ・パートナーズでは、企業不動産を単なる保有資産ではなく、事業、財務、承継、資産戦略を支える経営資源として整理するご支援を行っています。

    遊休地や低稼働不動産の方針を整理したい

    本社、工場、倉庫、賃貸不動産の保有方針を見直したい

    不動産と財務戦略、事業承継を一体で考えたい

    売る・持つ・活用するを比較し、合理的な方向性を決めたい

    不動産単体の価格や利回りだけではなく、経営全体との整合性から判断することが重要です。


    関連動画

    IRES Legacy実践編 第2回

    保有・活用・売却・組換え ― 不動産意思決定の基本フレーム

    ----------------------------------------------------------------------
    アテナ・パートナーズ株式会社
    東京都新宿区西新宿7丁目21-9
    天翔西新宿ビル 402号

    お問い合わせはこちら


    ----------------------------------------------------------------------

    当店でご利用いただける電子決済のご案内

    下記よりお選びいただけます。