自社株評価と不動産対策とは|事業承継で重要な考え方と基本戦略
2026/04/13
「不動産を売却すれば自社株評価が下がる」――そう思っていませんか?
実は、個別対策では根本的な解決にならないケースがほとんどです。
本記事では、事業承継における自社株評価対策の本質を「資産構造の設計」という視点から整理します。
はじめに
前回の記事では、事業承継において不動産が自社株評価を押し上げる要因となることを解説しました。その結果として生じる問題は次の4点です。
- 相続税負担の増加
- 納税資金の不足
- 株式売却の強制
- 経営権の喪失リスク
では、この問題に対してどのように対応すべきか。本記事では、実務における基本的な考え方と判断軸を整理します。
目次
1. 自社株評価対策の本質
自社株評価の問題は、「株価を下げる」「税金を減らす」という個別対策で解決できるものではありません。
【結論】
自社株評価対策の本質は「資産構造の問題」である。
すなわち、「どの資産を/誰が/どの法人で保有するか」という全体設計が問われている。
2. 単発の対策では解決しない理由
例えば不動産を売却した場合、資産は現預金に変わるだけで自社株評価は大きく変わらないケースがあります。さらに以下のような問題が残ります。
- 資産が再び蓄積される(問題の先送り)
- 構造が変わっていないため根本解決にならない
- 売却コスト・税コストだけが発生する
【重要】 対策の効果は「一時点の税務処理」ではなく、「その後も持続する構造かどうか」で評価すべきです。
3. 実務で用いられる代表的な手法
実務では主に3つのアプローチが検討されます。いずれも「構造を変える」ことを目的とした手法です。
① 資産管理会社の活用
不動産を別法人で保有することで、事業会社の資産を圧縮し、自社株評価への影響をコントロールします。事業リスクと資産リスクの分離にも寄与します。
② 不動産の機能別分離
「事業に必要な不動産」と「投資・遊休不動産」を明確に区分し、それぞれの保有主体と活用方針を整理します。これにより、承継対象資産の見通しが格段に明確になります。
③ グループ構造の再設計
複数法人を活用し、事業・不動産・金融資産を分離・再配置します。承継の柔軟性を高めるとともに、将来の経営体制変化にも対応可能な構造を設計します。
【リスク】 上記の手法はいずれも適用可否の個別判断が必要です。税務・法務・財務の専門家と連携した上で検討してください。
4. なぜ構造設計が重要なのか
不動産が事業会社に集中している状態では、「株価上昇」と「承継困難」が同時に発生します。一方、資産の配置や法人構造を見直すことで、以下が実現します。
評価のコントロール | リスクの分離 | 承継の円滑化 |
|---|---|---|
自社株の純資産価額を継続的にコントロール可能な構造を構築 | 事業リスクと資産リスクを切り離し、承継後の経営安定性を確保 | 後継者への株式移転・贈与を段階的・計画的に実行できる体制を整備 |
5. 意思決定の判断軸
自社株評価対策を検討する際、以下の3つの問いが判断の出発点となります。
問い① 現在の自社株評価を押し上げている不動産は何か(資産の特定)
問い② その不動産を誰が・どの法人で保有すべきか(保有構造の設計)
問い③ 対策後も評価が再上昇しない構造になっているか(持続性の検証)
これら3つの問いに答えられない段階での対策実行は、かえって構造を複雑化するリスクがあります。
まとめ
自社株評価と不動産の問題は、単なる税務対策ではなく、「経営・資産構造の問題」です。
そのため、売却・活用といった個別施策ではなく、「全体設計として考えること」が重要です。
- 対策の本質は「資産構造の設計」にある
- 単発対策は根本解決にならない
- 資産管理会社・法人分離・グループ再設計が代表的手法
- 「持続可能な構造か」を判断軸に置く
より深く学ぶために
自社株評価と不動産対策の実務論点は多岐にわたります。本記事で触れた各手法の具体的な適用条件・判断基準・実務上の留意点については、アテナ・パートナーズ株式会社は不動産戦略レポート「IRES Intelligence」を創刊します(4月15日公開予定)。
本レポートでは
- 自社株評価に影響する不動産の構造(類型別整理)
- 実務で用いられる具体的な戦略と適用条件
- 意思決定のための判断フレームワーク
について、実務レベルで解説します。公開後、本記事内でもご案内いたします。
自社の資産構造や事業承継について個別にご相談されたい方は、お気軽にお問い合わせください。
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