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「事業承継を成功に導く不動産戦略」〜資産を守り、価値をつなぐ4つの視点〜(3)

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「事業承継を成功に導く不動産戦略」〜資産を守り、価値をつなぐ4つの視点〜(3)

「事業承継を成功に導く不動産戦略」〜資産を守り、価値をつなぐ4つの視点〜(3)

2025/06/17

はじめに

株価評価の盲点は“不動産”にあり

 事業承継の現場において、よく耳にする課題のひとつが、「自社株評価が高すぎて、後継者が引き継げない」というお悩みです。特に中小企業のオーナー社長にとって、自社株の相続や贈与に関わる税負担は極めて深刻な問題です。

 実はその“評価の高さ”の原因を深掘りしていくと、多くの場合において「法人が保有する不動産」が大きな割合を占めていることが少なくありません。土地や建物といった不動産資産は、長年にわたり保有していると評価額が大きく膨らむ傾向があります。これが自社株評価を押し上げ、後継者の納税資金確保や株式の取得障壁となるのです。

 以下のようなケースでは、特に注意が必要です:

  • 先代から引き継いだ遊休地を法人名義で保有している
  • 法人が賃貸用のアパート・マンションを保有している
  • 法人が本業と関係ない不動産を「資産」として保有している

いずれも、評価上は「含み益」と見なされ、自社株の純資産価額方式に大きく影響します。今回は、このような“法人所有の不動産”が自社株評価に与える影響と、それに対する具体的な対策を解説いたします。

株価評価の基本構造と不動産の影響

 非上場企業における自社株評価は、主に「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」に分類されますが、不動産を多く保有する資産管理会社や不動産賃貸業を営む法人では、「純資産価額方式」による評価が基本となります。

 この純資産価額方式では、法人の資産から負債を差し引いた純資産額をベースに、発行済株式数に応じて株価を算定します。そのため、土地や建物といった固定資産の評価額がそのまま株価に直結することになります。

 不動産の評価方法としては、

  • 土地:路線価方式や固定資産税評価額
  • 建物:帳簿上の減価償却後の価額

が一般的です。ただし、市場価格との乖離が大きい場合や、M&A、相続など特別な評価が必要な場面では「時価評価」や「収益還元法」などを活用して、実勢に即した価額に修正されることもあります。

対策(1)

法人保有不動産をオーナー個人へ移転する

 まず考えられる選択肢は、「法人が保有する不動産をオーナー個人に移す」ことです。不動産を法人に保有させたままでは、純資産額が膨らみ続け、それが自社株の評価に直結します。そこで、遊休地や本業に関連しない賃貸不動産などは、個人へ移転し、法人の資産規模をスリム化することで、株価評価を引き下げる効果が期待できます。

【具体的な移転方法】

  1. 売買による移転(時価で売却)
  2. 現物配当による移転(株主への資産分配)
  3. 会社分割や資産管理会社への移行スキーム

 いずれも、移転時に法人・個人双方で課税リスクが生じる可能性があります。また、個人の相続税が増大する可能性もあります。よって、税理士や不動産コンサルタントとの事前の綿密なシミュレーションが不可欠です。

対策(2)

法人内での不動産の活用方法を見直す

 法人に不動産を保有させ続ける選択を取る場合でも、「活用の方法」を見直すことで、評価額への影響をコントロールできる可能性があります。

【例】

  • 遊休地を駐車場や社宅として社内活用し、資産の使用実態を明確にする
  • 建物を第三者に賃貸し、賃料収入を得ることで、収益性のある資産に変える
  • 子会社や関連会社へ移転し、本業資産と分離して評価上の調整余地を持たせる

 単に保有するだけの「遊休資産」ではなく、会社経営に必要な「事業資産」であることを明確にすることで、評価上の見直し余地が生まれます。

対策(3)

収益還元法を活用して“評価の妥当性”を主張する

 遊休地や老朽化した賃貸物件など、収益性に乏しい不動産を保有している場合、固定資産税評価額や帳簿価額では、その実勢に見合わない評価額が算出されることがあります。そこで活用されるのが「収益還元法」です。

 【収益還元法とは】 将来生み出すであろう賃料収入などの収益を基に、現在の価値(時価)を算定する手法です。

 【計算例】

  • 年間賃料収入:120万円(10万円×12ヶ月)
  • 還元利回り:8%
  • 評価額:120万円 ÷ 8% = 1,500万円

 これが帳簿上3,000万円、路線価評価4,000万円とされていても、現実的な市場価値は1,500万円であると主張できる根拠となります。もちろん、税務上この評価額がそのまま通用するわけではありませんが、M&Aや贈与、株式買取時の価格交渉において、強力な補足資料となります。

 さらに、遊休不動産であっても、実際に収益化(例えばコインパーキングやトランクルーム)することで、収益ベースでの評価を組み立てやすくなります。
 いずれにしても、費用はかかりますが、不動産鑑定士に依頼し、適切な不動産鑑定を行うことが安心でしょう。

まとめ

不動産を活かすか、切り離すか、その判断が命運を分ける

 自社株の評価において、不動産が果たす役割は極めて大きく、その扱いひとつで承継時の税負担や後継者の資金繰りに大きな差が生まれます。

  • 保有し続けるのか
  • 移転するのか
  • 活用方法を見直すのか
  • 評価手法を工夫するのか

 いずれの対策も「正解」はひとつではありません。しかし、共通するのは「早期に動き出すこと」です。数年単位で準備を行えば、組織再編、資産移転、節税対策など、多様なオプションを取ることが可能となります。

 不動産という“重たい資産”をどう扱うか。事業承継の成功は、ここにかかっていると言っても過言ではありません。

 次回は「法人が所有する不動産を誰に・いつ・どう承継するか」について、法的・税務的なスキームを交えて、実践的に解説いたします。

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