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【IRES 第5章】企業という立場から見た不動産の経営

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【IRES 第5章】企業という立場から見た不動産の経営

【IRES 第5章】企業という立場から見た不動産の経営

2026/02/23

目次

    企業不動産の問題は、なぜ表面化しないのか

    本社ビル、工場、物流拠点、社宅、遊休地。
    多くの企業は、長年の事業活動の中で不動産を積み重ねてきた。

    しかしその多くは、歴史的経緯の産物である。
    「なぜ今もこの不動産を保有しているのか」
    という問いが、改めて立てられることは、ほとんどない。

    ここに、企業CRE(Corporate Real Estate)の本質的な問題がある。

    貸借対照表の固定資産欄に記載される一項目として扱われている間、
    不動産は経営判断の視野に入らない。
    問題が顕在化したとき初めて、「どうするか」が議論される。
    それが多くの企業の現実だ。

    なぜ企業不動産は「戦略化」されにくいのか

    企業における不動産は、組織の縦割り構造の中で分断されている。

    • 総務部が管理する本社ビル
    • 事業部が使用する工場・倉庫
    • 財務部が担保として扱う土地
    • 経営企画が全容を把握しきれていない遊休資産

    それぞれの部門にとっては合理的な管理がなされている。
    しかし「全社戦略として統合されているか」と問われると、そうではない。

    例えば、本社建替えの議論は「老朽化」「耐震性」「コスト」といった顕在課題から始まる。
    しかし本来問うべきは、「これからの事業戦略において本社はどのような役割を果たすのか」である。

    不動産の議論が設備更新レベルに留まり、経営戦略レベルへ昇華しない。
    この構造こそが、企業CRE判断を曖昧にし続けている根本原因だ。

    氷山構造で見る企業不動産の問題層

    企業不動産の課題は、氷山に例えるとわかりやすい。

     

    【水面上|顕在課題】

    • 本社建替えの是非
    • 老朽化・耐震性への対応
    • 固定資産税負担
    • 空室・遊休地の存在
    • 含み益の活用

    これらは目に見える「症状」である。問題として認識はされているが、原因には届いていない。

     

    【水面下 第1層|事業課題との接続】

    • 事業ポートフォリオの再編
    • 拠点戦略の見直し
    • 人材戦略・採用戦略との整合
    • 中長期成長戦略との接続

    企業不動産は、事業の方向性と不可分だ。
    成長投資を加速する企業と、選択と集中で資産を絞る企業では、不動産の位置づけは根本的に異なる。

     

    【水面下 第2層|資本構造・投資効率】

    • ROICやROAへの影響
    • 資本コストとの関係
    • オフバランス化戦略
    • 借入構造と財務レバレッジの最適化
    • 出口戦略の有無

    ここまで踏み込んで初めて、不動産は「資産」ではなく「資本構造の一部」として認識される。

    企業CREの難しさは、この三層を同時に整理しなければならない点にある。

    企業CREにおける三つの意思決定パターン

    実務の現場では、企業不動産の扱いは大きく三つに分類される。

     

    ① 現状維持型
    「問題が顕在化していないから動かない」。最も多く見られるパターンだ。
    しかし、判断を先送りすること自体が、一つの経営判断であることを見落としている。
    不動産は保有しているだけで、キャッシュフロー・財務バランス・投資余力・将来の意思決定の自由度に影響を与え続ける。

     

    ② 部分最適型
    不動産単体で売却・建替えを判断する。
    短期的な財務改善は可能だが、事業戦略・資本戦略との整合が弱く、後から再編が必要になるケースも少なくない。

     

    ③ 統合最適型
    事業戦略・財務戦略・資産戦略を同時に設計する。
    意思決定のプロセスには時間を要するが、判断の精度と再現性が高く、経営の中長期課題を同時に解決する。

    IRES(Integrated Real Estate Strategy)は、この「③ 統合最適型」の意思決定を実現するための整理フレームである。

    IRESで企業CREを統合する

    IRESは、企業不動産を次の三側面から同時に捉える。

    • Asset(資産):評価・保有・圧縮・承継
    • Business(事業):機能・拠点・収益性・柔軟性
    • Investment(投資):資本効率・リスク・出口

    これら三側面を分断せず、重なりの中で判断することがIRESの本質だ。

    例えば、「本社ビルを売却して賃借に切り替える」という選択肢は、単なる資産圧縮ではない。

    • 事業の機動性を高める戦略なのか
    • 財務レバレッジを改善する戦略なのか
    • それとも短期的な損益改善を優先した判断なのか

    意図によって意味が変わる。
    統合的に整理されなければ、意思決定の軸は定まらず、施策は本質からずれていく。

    企業不動産は「守り」か「攻め」か

    多くの企業にとって、不動産は守りの資産と位置づけられている。
    担保価値、安定資産、含み益。確かにそれらは重要な側面だ。

    しかし本来、不動産は攻めの経営資源にもなり得る。

    • 不動産売却による成長投資原資の確保
    • 遊休地の再開発・新規事業創出
    • 拠点再編による生産性・採用力の向上

    重要なのは、「残すか売るか」という二択ではない。
    「どの経営戦略を実現するために、どう活用するか」という問いの立て方である。

    CRE戦略とは、不動産の最適化ではなく、経営の最適化だ。


    まとめ|企業CREは経営戦略そのものである

    企業不動産の問題は、設備更新や老朽化対応という次元に留まらない。

    それは、事業戦略・財務戦略・資本構造と切り離して考えることのできないテーマである。

    IRESは、企業CREを「資産」「事業」「投資」の三側面から統合的に整理し、
    経営判断として構造化するためのフレームだ。

    いま保有している不動産は、これからの経営戦略と整合しているか。

    この問いを立てることが、企業CREの出発点となる。


    ▼ 企業CRE戦略の個別整理をご希望の方へ

    本社建替え、遊休地活用、資産圧縮、資本効率改善。
    いずれも、単独で判断すべきテーマではない。

    IRES(Integrated Real Estate Strategy)は、
    企業不動産を統合的に整理し、経営判断として構造化するための考え方だ。

    「すぐに売る・すぐに建てる」という結論ではなく、
    まずは「判断できる状態を整えること」から始める。

    「今すぐ結論は出せないが、一度頭の中を整理しておきたい」という段階でも構わない。

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