空き家対策特別措置法の改正で何が変わる?
2025/05/26
『管理不全空き家』指定リスクと事前準備
2023年12月に施行された「空き家対策特別措置法」の改正は、不動産オーナーにとって、資産のあり方を根本から見直す必要がある重要な転機といえます。
これまで「特定空き家」のみが対象だった行政の指導・勧告が、「管理不全空き家」という新たな区分の創設により、対象が大きく拡大されました。
本記事では、改正法の要点を整理しつつ、オーナー様にとってのリスクとチャンスを明らかにし、今からできる具体的な対応策について専門的な視点からご案内いたします。
1. 改正の背景 ― 社会課題としての空き家問題
日本では、総住宅数に占める空き家の割合が年々増加しています。
2023年時点で全国の空き家数は約900万戸(総住宅の13%以上)にのぼり、特に地方都市や郊外における老朽化空き家の増加は、防災・防犯・景観・衛生といった多面的な地域課題を引き起こしています。
こうした背景を受けて、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空き家特措法)」が施行されましたが、その後の実務運用において「特定空き家の指定にはハードルが高い」「早期の行政介入が難しい」といった課題が指摘されてきました。
その解決策として今回の改正が行われたのです。
2. 改正のポイント ― 「管理不全空き家」の新設
今回の改正の核心は、「管理不全空き家」という新しい区分の導入にあります。
■ 特定空き家とは(従来)
以下のいずれかに該当する場合、市町村が「特定空き家」に指定できます:
- 倒壊等著しく保安上危険な状態
- 著しく衛生上有害となるおそれ
- 適切な管理が行われず著しく景観を損なう状態
- その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切
→ 「特定空き家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1減額)が解除されるほか、行政代執行の対象となる場合もあります。
■ 管理不全空き家とは(改正で新設)
これまでの「特定空き家」に比べて、より軽微な劣化段階であっても、以下のような状態であれば対象となり得ます
- 屋根や外壁が劣化し、部材が落下する可能性がある
- 雑草が繁茂し、害虫の発生源になっている
- 郵便受けにチラシが大量に溜まっており、管理されていない様子が明らか
- ごみが不法投棄され、衛生面で問題がある
→ 指導・勧告の対象となり、固定資産税の住宅用地特例が解除される可能性がある点が、オーナーにとって極めて重要です。
3. 固定資産税の軽減措置が失われるインパクト
多くのオーナー様にとって最大の関心事は、「固定資産税の住宅用地特例」の解除による税負担の増加ではないでしょうか。
【参考事例】
- 土地面積:200㎡(約60坪)
- 固定資産税評価額:3,000万円
- 通常の固定資産税:3,000万円 × 1.4% = 42万円/年
→【住宅用地特例】が適用された時:7万円/年 (6分の1適用)
→「管理不全空家」の指定を受けた時(特例解除):42万円/年
⇒年間で約35万円以上の増税となるケースもあり、長期保有コストが大幅に変わるため、対策が急務です。
4. どんな空き家が「管理不全空き家」と見なされるのか?
「まだ使える」「すぐ壊れるわけではない」―そう思っていても、行政の判断基準によっては指定対象となる可能性があります。
主なチェックポイント
| チェック項目 | 指定の可能性 |
| 定期的な見回り・清掃をしていない | 高 |
| 郵便物があふれ、不在が明らか | 高 |
| 雨漏り・外壁剥離など劣化の兆候あり | 中〜高 |
| 隣地への越境(枝、根など) | 中 |
| 所有者が不明・連絡不通 | 高 |
※ 市町村ごとにガイドラインが異なるため、地元行政の判断基準を確認することが重要です。
5. 今すぐできるオーナーの対応策
(1)現況のチェックと可視化
- 定期的に現地確認・写真撮影(四季ごとに残しておくのが理想)
- 雨漏りや外壁の傷みがあれば、早期の補修見積もりを取得
(2)市町村ガイドラインの確認
- 自治体の「空き家等対策計画」「管理ガイドライン」を閲覧
→ 例:東京都、横浜市、福岡市などは詳細な基準を公開しています
(3)簡易な管理委託契約の活用
- 空き家管理会社に「月1回の巡回+報告」を依頼(月額3,000~8,000円程度)
- 定期報告により、管理実績が行政指導の回避要素となることも
(4)資産活用・出口戦略の検討
- 解体、更地化(相続税対策が必要な場合は注意)
- 月極駐車場・シェア畑・トランクルーム等、簡易活用の選択肢
- 売却、等価交換、定期借地の活用など、不動産コンサルタントへの相談も有効
6. 相続予定者・遠方所有者こそ要注意
特に注意すべきは、以下のような方々です:
- 「親が住んでいた実家」が空き家になったまま数年放置。倉庫代わりに使用。
- 地元を離れており、現地確認ができない
- 兄弟姉妹間で共有名義となっており、意思決定が進まない
- 相続登記をしておらず、所有者が名簿上「故人」のまま
このような場合、行政から突然、空き家の改善を求める通知が届く可能性があります。
また、2024年4月以降「相続登記の義務化」がスタートしたこともあり、管理責任の所在が明確化される流れは今後さらに加速していくと考えられます。
7. おわりに ― 単なるコストではなく「資産再生の契機」と捉える
空き家の問題は、単なる「放置のリスク」だけでなく、視点を変えれば「新たな活用価値を見出す好機」でもあります。
例えば、
- 駅から徒歩10分圏の古家をリノベーションし、賃貸住宅やシェアオフィスに再生
- 歴史的建築物として保存し、観光資源化や文化施設として利活用
- 子や孫の将来の自宅用地・事業用資産としての計画的保有
など、金融・税務・建築・地域政策の知見を総合的に活かすプロジェクトとして取り組むことが可能です。
ご相談は専門家とともに
アテナ・パートナーズ株式会社では、空き家問題に関する調査・活用提案・相続対策までワンストップでご支援しております。
弊社在籍の不動産コンサルティングマスター、ファイナンシャルプランナー、建築士の有資格者の視点で、個別事情に応じた最適解をご提案いたします。
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