今後の高齢者施設等の長期一括借上(サブリース)契約のリスクヘッジ方法
2024/01/22
第1章 はじめに
筆者は1都3県の土地を所有する地主に対して、主として有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などの高齢者住宅や障害者グループホームなどの障害者居住施設、デイサービスや就労支援施設などの通所施設、保育園や児童発達支援センターなどの児童福祉施設等の運営事業者が長期一括借り上げ(サブリース)する施設(以下、「高齢者施設等」という。)を建て貸しすることを提案するビジネスを展開している。
この高齢者施設等を建て貸しする土地活用の特徴としては、賃貸アパート・マンションと比較すると、
- 競合物件が少なく、駅から離れている、利便性が悪い、地形が悪いといった立地条件、物件条件が悪い敷地に対しても需要がある
- 2040年頃まで高齢者人口が増加する予測がある
- 開設にあたって行政への許認可や届出が必要な施設が多く、過当競争になりにくい
- 施設運営事業者による長期一括借り上げ形式となるため、地主は長期間安定的に家賃収益が期待できる
- 万一賃借している運営事業者が撤退する場合でも、後継の運営事業者が入居者やスタッフを継承することによって、家賃収入が途絶えることが少ない
などが挙げられる。よって、アパート・マンションや店舗・事務所などの同様の収益不動産に比べると、表面利回り(=家賃収入/建築費)は劣るものの、空室リスクは低く、長期安定的な収益を上げることが期待できる。そのため、相続税対策を必要とする地主で、特に首都圏郊外では農地や月極駐車場などの低未利用地の有効活用方法として、10年程前より注目されてきた。
ところが、ここ数年、高齢者施設等の建貸事業における投資環境、すなわち上述の表面利回りの悪化が見られる。そこで、本稿では、第2章ではその環境の動向、特に表面利回りの算出式のうち分母に関連する項目について、検討したい。続いて、第3章では介護業界を取り巻く環境の変化により、表面利回りの算出式のうち分子に関連する項目について要因分析を行う。第4章ではそのような環境変化に対するリスクヘッジの手法、そして最終の第5章では全体をまとめて、今後この事業の展望を考察したい。
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